Archive for June 2007

29 June

If all the world・・・シンデレラの独り言


 


 昨日、去る4月に田村玄一さんの録音に参加させていただいたCDが届けられる。
 スティール・パンを玄一さん、私がピアノというデュオの曲である。
 玄一さんのディレクションに、とても魅力を感じ、素晴らしい時を過ごさせていただけた。
 
 このアルバムでの私のプレイは、先日の録音とはガラッと異なり、全くロックではありません(微笑)。
 長年おつき合いしてきたクラシック・ピアノの経験と、ポップな感覚をミックスしたものに。
 灰色の空の下で、シンデレラが夢をみているような気持ちで弾いたピアノ。
 ・・・舞踏会がそこまで来ているにもかかわらず、彼女だけは出かけることができない・・・でも、そこに優しい魔法使いが現れて、支度を整えてくれる。
 シンデレラは、喜びに胸を弾ませて出かけていく。
 そこで出会った人は、誠実な優しい目をしていて・・・
 しかし、真夜中の鐘が鳴る頃、彼女は彼と踊ったひと時を胸に、カボチャの馬車に乗る。
 ガラスの靴を落としたりするシンデレラではない・・・アクアマリンのリングをお守りにしているから・・・彼女、案外上手なお料理をする・・・今日も美味しいグラタンを作ったわ・・・。

 シンデレラは、世界の全てが自分のためにあるなんて、思ってはいない。
 彼女に出来る事・・・
 昼間、時間を見つけては、白い紙や白と黒の鍵盤と語り合うこと。
 深夜、白い夜着を身につけて、散文的になること。

 そこで、今日は、このような詩を・・・もう一人の私は、時々、異国の人となるの。

 
If all the world were paper,
And all the sea were ink,
If all the trees were bread and cheese,
What should we have drink?


Million miles,
Million eyes,
Million mirrors,
Million hands,
Million tears,
Million smiles・・・

In the lap of the God・・・

 So I hear ・・・Angelus bell・・・






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27 June

録音、小悪魔風に


 湿った空気に潜む植物の匂い、門を開ける時に、私の腕に滴り落ちる、昨日の雨の雫。
 ここが軽井沢だったなら、今日のような朝は、きっと霧が立ちこめているのだろう・・・などと、朝から・・・Drifter・・・いいえ、塩をたくさん詰めたリュックを背負って巡礼の旅の最中の独りの女・・・ううん・・・”Flying circus”・・・それとも、”circuit”・・・。
 
 6月25日、スタジオに集まったミュージシャンは、大熊亘氏、川口義之氏、坂本弘道氏、桜井芳樹氏、関島岳郎氏、中尾勘二氏、吉野繁氏、そして、私。みわぞうちゃんも、参加してくださる。
 もう、何と言うか、親族の集まりのような顔ぶれなのである。
 早速、皆さんに私の曲の譜面をお渡ししていたら、チェロの坂本さんがおっしゃるわ・・・
「曲、悪魔的なんでしょ? だったら、”ノコギリ”、やりましょうか?」
 ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、この”ノコギリ”・・・というのは、決して、”マジック”にあるような切り刻みのことを話しているのでは、ありませんの。
 演奏上のこと、よ、誤解なさらないでね。
 
 確かに、私の中のビートは、” Sympathy For The Devil”かもしれないが・・・

 心を打ち明けるなら、”Sympathy With The Devil”・・・なのである。

 ”Sympathy for”なら、”憐れむ”・・・だけど・・・”Sympathy with”・・・なら、”共感”・・・である。

 ”Sympathy”という言葉、天国と地獄ほどのかけ離れたふたつの意味を持つ。
 それとも、”憐れみ”と、”共感”とは、あまりに身近な存在・・・つまり、寄り添う精神なの?
 ジキルとハイドのように・・・光と影があるように・・・愛と苦悩が縺れるように?

 クリックなしでベーシックを録り、ダビングしていく。
 ヘッドフォンから鳴る中尾さんのドラムが、すっ飛ばす。
 ルパンのベースは、ドゥン・ドゥン・ダ・ダ・ダー・ドゥィッド・ダー・ダー・・・。
 大熊さんのクラリネットは、せきこむように歌うわ。
 川口くんのブロー!&イントロのハープ。
 坂本さんのチェロは、マジックのように。
 関島さんのフリューゲルと、カシオトーンの不思議ちゃんなシンセな音。
 私のピアノは、そこで思いっきり跳ねようとする。

 打楽器・・・なる・・・ピアノ。
 鍵盤に目は向かわない。

 目が視ているものは、何?

 それは、秘密よ。

 私は幻視者なの・・・今は、幻視者・・・。
 素敵な幻を見つめて、今、そこに向かって、飛び込んでいくの。
 ロックな乙女心をいっぱい詰め込んだ胸の裡を、開いて見せるの。
 エンディングあたりになったら、グッときてしまう・・・大熊さんが、これでもかっていうくらい、歌い倒そうとしているのですもの・・・。

 素晴らしいミュージシャンに囲まれて、本当に幸せな時間を過ごすこと、一瞬である。
 私の録りは、ワン・テイクで、OKとなり・・・もう、終わってしまうのね・・・。
 その後、ルパンのギターをダビング。
 で、最後に”目を入れる”吉野君。
 自分の曲が、理想通りに映し出されていく様子をもっと感じていたい・・・。

 みわちゃんが、”めちゃんこロックでかっこE!”って、ニッコリ笑顔で気に入ってくださったご様子・・・同じ女性にそのように言っていただけると、凄く嬉しい。

 自分の心の中にしまい込んでいればそれまでのことを、明確にしてるれるような作業。
 これは、毒ですよ・・・と言われても、飲んでみたくなるような、誘惑。

 限界の無い時間を混ぜ合わせるような、が・・・そこに、聖水を撒く・・・の・・・だわ・・・。

 小悪魔は、素敵な悪魔とお友達でいる時間が長ければ長いほど、純粋になっていくものよ。
 
 何故かしら?

 録りが終わって歓談していると、別室にいらっしゃった、岡部さんや芳垣さんの姿が。

 
 
 女が作るとき・・・それは、曲だけではないわ・・・

 女が言葉をしたためるとき・・・何でもいいわ・・・女が作るとき・・・

 それは、成熟を無視し、時を超えるような、叫びに似た、純粋な声を赤裸々にしてみたい衝動を感じるの。

 私は、植物的なので、例えば、このようなことを想う・・・

 野に咲く花々が、散乱するような、広げられた胸の中。

 それから、自己犠牲に似た、パッション。

 怒りに似た屈折を、美しく歌い上げようとするサディスティック。

 悪戯をするような、快感。

 この薬草に近づくな・・・と、言われるような危険な毒に浸されるような、陶酔。

 しかし、それは、作る女の”純度”を、確実に高くするわ。


 この録音、劇団、野戦之月海筆子の今年の芝居のテーマである。


 今宵の私はといえば、妖精ジェーン。

 明日の朝は、ミルクを飲みましょう。

 軽井沢の蜂が蓄えた蜜と一緒に。





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25 June

女が曲を作るとき


 雨だれの音が止まない、梅雨らしい日曜日である。
 ジプシーの女のような、黒い瞳を想像しながら、ピアノに向かったわ。
 彼女の目は、憂鬱ではない、タロットを手にして、下唇を噛む・・・そんな目である。
 迅速で回転のよい頭を持っている彼女は、しかし、可憐で・・・静かな熱意をひた隠している。
 そういう演技をする女優を、最近、観たのである。
 今から私、彼女に吸い寄せられよう・・・なんて、昼日中から・・・悪くはないわ。
 
 
 土曜日の夜にざっと書き上げた曲に、もう少し手を加える午後。
 バンプとエンディングを書く。
 やはり、8の跳ね気味がいいのだろうな・・・と思いつつ。

 昨晩は、”ザ・フー”だった(らしい)が、今日になってみると、いつしか、このようなノリに・・・

 

 乙女なロック心、自由ににNOTEして、快感なのですわ。
 
 当初はメロの一部をピアノで弾こうか・・・と、うっすら意識していたのだけれど、もう、それはやめに。バッキングだけにしようと考える。
 旋律部分を歌いながらピアノを弾いていると、やっぱり楽しいのね。
 作品はインスト、だけど、ハートは、凄く歌ってる。どっかで、個人的な詩が生まれ、それを言葉にせず、歌っている。
 バンプとエンディングのコード進行は、全くの好みでやっちゃった・・・で、それを自分が歌うと、可愛い曲な印象になってくるのだが・・・
 いやいや、そんなことは、無いはずなのである。
 現場に行けば、ぐっと、男っぽくなるに決まっている・・・確信、あり。
 

 湯川潮音ちゃんのサポートから帰宅したルパンに、またギターでちょっと弾いてもらう深夜。

 イントロ、ドラムのフィル・・・そして、ピアノとハープで始めようか、なんて思う。
 ・・・誰だ?・・・ハープの男って?・・・”彼だ!”・・・わ・・・そうよ、彼には、タンバリンとマラカス・・・そして、勿論、ご機嫌なアルトとバリトン・サックスを・・・。

 ん・・・何ともロックな仕上がりが、そこまで来ているな。

 映像は、ロックンロール・サーカス・・・だけど・・・

 ・・・リサ、明日、ポールになれ。 


 で、おやすみなさい。




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24 June

まさか”The Who”に寄せた仕事?


 あからさまな作曲依頼な土曜日午前。
 丁度、曲を作りたかったような・・・そんな気がしていた昨今だったので、揺るぎもせず了解。

 午後6時を過ぎる頃、中村まりさんのライヴに向かうルパン。

 彼はその時刻まで、我が家の”音楽室”にて、諸々の作業を行っていた。
 その間、私は階下の居間にて、想いを巡らす・・・頭の中だけのメロディーを準備しておく。

 ・・・イントロ・・・キーの9thから入ろうか・・・なんて・・・。
 Aメロ・・・トニックから行かない・・・こと。

 さて、ルパンが出かけたら早速階上にてピアノに向かう。
 実に、締め切り、明日(24日)。
 録音、週明け、という寸法である。

 ピアノに向かった瞬間に指が向かった場所が、キーである。
 イントロは、9th。
 それは、2度のコードから始まったメロディー。
 やがて、ちょっと転調をするが、そこでかなり愉しくなる。
 旋律をどのように動かすか・・・おおいに動かすべし・・・な、今日の私なの。
 そして、エンディング・・・これは、恐らく、録りの現場では”自由”になるはず・・・だから、メジャー7の音を使いながら、あやふやにしてみる・・・どのように向かってもよい・・・ように・・・。


 すると、携帯にママンからの声。
 少し前、フランスを訪れていた彼女なのだが、帰国してから法事あり、歌舞伎ありの日々だという。
「時差ボケ、ないのよ」
「あら、そうなの、元気ね」・・・と、毎度時差ボケのような娘は答える。
「健康診断に行ってきたんだけど、問題ないみたい」と、胸を張って答えるママンである。彼女は、栄養と料理が専門なのである。
「あなた、まだ痩せてるの?」
「そうね・・・?キロかな、昨日も」
「ねえ、そんな体重って・・・ね・・・そろそろ死ぬっていう人の体重じゃない?」と、ママン・・・残酷なことを、平気で言う女である。
「そう言われれば、そうなんだけど・・・」
「ねえ、足なんか、小学校の低学年の時みたいにヒョロヒョロしているんじゃないの?」と、笑う彼女である。
「そうかもしれない」
「子供の頃のあなたの足・・・どうしてこんなに細いのかしらって、心配したもの」
「歩いてるもの・・・躯、軽いと、動くのとっても楽よ」
「ま、ダイエットしない躯に産んであげた私に感謝しなさいね」
 ・・・押しつけがましいことを言う母である。
 で・・・
「パリのお土産あるわ・・・腐らないものだから、いつでもいらっしゃい」
「はい・・・感謝・・・」
「あなたの人生を信じているわ」


 気侭な横恋慕が入り込んだ午後9時。
 そろそろ、今日の仕上げである。


 結果、出来上がったものに・・・なんだか、”ザ・フー”・・・を、感じる。

 私の中で、今宵、無意識にあったのは、もしや・・・”トミー”だったのでは・・・なんて、思ってしまう・・・不思議なことではないけれど。

 ・・・実は、”カーラ・ブレイ”・・・右肩あたりに乗せておきたい気分だったのに・・・消えた?

 深夜、帰宅したルパンに軽くギターで弾いてもらう。

 あら、こんな風に弾かれると、これ、”ザ・フー”・・・的に、ございます!

「いいじゃない」と言われ・・・
「エレキ・ベース、どうしても、ほしい・・・N氏、いらっしゃらないのかしら?」
「だったら、俺、弾くよ」


 どのような音になるかしら・・・楽しみ。
 私、ピアノ、弾くんだろうな・・・ウサギのように、跳ねちゃいそう・・・。


 作業が済んだら、ゆっくりお風呂・・・浴室にいる時間においては、炭焼き石鹸のナイーヴな香りが最近好きである。
 湯上がりには、今宵もティファニーを・・・これも、悪くはない。

 
 ムーン・リヴァー・・・

 夏至は過ぎ・・・

 流れているはずの”天の川”を、頭上に。

 Drifterなら、感じる、古風な風流・・・。


 そして、”The Who”・・・


 私は、”誰”?


 ・・・な、無責任になる。


 小気味よく、自由になる。


 そろそろ、夜が明ける頃・・・


 妖精たちは、夢に溶ける頃・・・






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19 June

赤い薔薇のポール


 


 P・マッカートニー・・・というか”Wings”名義のあるアルバムとして、私が大好きなのは、どうやら「Wild Life」「Red Rose Speedway」「Venus And Mars」なのだろう。
 初めてレコードに針を落としてから30年以上の年月が経っても、未だに聴いているということは、そういうことなのね。
 私にとっての、ポールの3大好きアルバム・・・なのだが、この3枚については、それぞれ異なる印象もある。
 
 リアルタイムだったのが「Venus・・・」だったので、これはもう、致し方ない。このアルバムのことは、以前にも書いたかもしれないわ。

 その次に買ったのが「Wild・・・」、13歳。・・・正直、最初は、「これは駄作だな」と思ったものである。何故か、寂しい印象があって、曲も不揃いな気配がして、ポールが何か、ひどく個人的になっている空気があるような気がした。そのくせ、私生活が充実しているようで、何だかとても可笑しな作品だと思いながら、じっくり、じっくり、聴き続けた。スカスカな空間があって、曲のタイトルもあまりにシンプルで、その頃の他のビートルたちのソロ・アルバムに比べると、圧倒的に重厚感が薄いように感じて、ポールに泣けて・・・しまいそうで・・・。そのおかげだろうか?・・・何故か、このアルバムに、凄い愛着があるのである。・・・13歳の夏休み、実家の庭に、庭師さんが入り、チョキチョキと木々を刈っているのを横目に、お気楽な少女は、レコード・ジャケットの水と木々の光景を見つめながら、こんなことをこっそり思ったものだった・・・「リンダの着ているワンピースが可愛い・・・彼女の足もとが水の上に浮かぶ様子が素敵」・・・なんて・・・。

 これとほぼ変わらない時に「Red Rose・・・」も聴くのだけれど、このレコードの嬉しいことは、所謂”おまけ”な部分だったかもしれない。派手なピンクの上に歌詞と”ポール・マッカートニーのすべて”と題されたページがあって、出生から'73年当時までの軌跡とインタビュー記事などが掲載されているのである。私は深夜、ベッドに入りながら、くどいほどこれを読んでいた。また、”PROGRAM”には、写真が満載・・・上記の映像の中にあるものたちが、思春期の少女の心を奪った。1曲目の”BIG BARN BED”なんて、痺れた。このアルバムをやや甘口と思われる方もいらっしゃるかもしれない。”MY LOVE”のようなヒット曲が生まれたのだから仕方が無い。同じ頃のジョンのアルバムは「MIND GAMES」、これも、ジョンの”失われた週末”を克服してのアルバムなのだと考えれば、甘いかもしれないわ・・・。それはともかく、あまりに何度も聴いていたので、この1曲目の最初の部分で針が飛ぶ状態に一時期なったのだけれど、何故か、解消された。・・・粗雑なことを・・・と言われるかも知れないが・・・20数年前、台所洗剤でレコード盤を洗ってから、飛ばなくなったのだけれど、傷があったのは確か・・・汚れの問題ではないと思うのだけれど、嬉しいことに、小さき者を救ってくれるのが、ささやかな神様の仕業・・・と、信じているわ・・・お馬鹿さんと言われようとも。

 これらのアルバムを聴いていたティーン時代の私に、世界を売っぱらいたくなるほどの失恋の思い出でもあれば、未だに大好きでいられたかどうかは、わからない。
 が、幸いなるかな・・・麗しいことに、そんなダメージは、無かったのである。
 しくじる・・・ことくらいなら、あったかもしれない。
 でも、世界を売っぱらう少女・・・になるような必要はなかったのね。

 何故かって・・・それは、どんな男の子よりも、中学生の私にはポールが素敵だったから。
 ハートは英国!
 で、今でも、大好きと明言できる私なのである。
 そうよ、到底考えられないようなことが無い限り、大嫌いなんていう科白、私には、全く似合わない・・・ありえない・・・と、言いきれるわ。
 大好きと言って、微笑んでいられることの、幸せを知っていればこそ。

 
 Who's that coming round that corner
 Who's that coming round that bend
 Who's that coming round that corner, will it
 Will it be my friend
 
 Keep on sleeping in a big barn bed
 Keep on sleeping in a big barn bed

 ・・・・・・・・

 6月のロンドンは、素晴らしい!
 何度も、何度も、言うけれど、本当に、素晴らしい!

 エニシダの黄色い花があちらこちらに咲き、人々は午後10時まで明るい空の下で、短い夏の始まりを喜ぶ印として、私たち東洋人には、ちょっとだけ肌寒いと感じられる空気にも負けることなく、肌をさらし、太陽を感じる。

 
 そうして、6月18日というのは、ポール・マッカートニーのお誕生日でもあるわ。


 「Red Rose Speedway」には、”One More Kiss”という曲があるけれど(大好きな曲!)。


 今宵の私は、”Bluebird”となって、ポールのバースに・・・清純な”One Kiss”・・・捧げましょう。


 ・・・ん・・・幾つになっても、お馬鹿さんね・・・泣けてきちゃう。





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