Archive for July 2007

28 July

断つ


 昨日から、断食である。・・・半断食・・・という状態だろうか、今は。
 いつもとあまり躯は変わらないが、つまり、食べることをしないでいるだけなので、一体どれくらいの効果があるのか知らないが、夏のサナトリウムらしくて、よい。

 本当は一日以上の断食をやってみたいところなのだが、これは、来月、ルパンがツアーに出た頃に、改めて行ってみようか。

 痩せようなどとは、間違っても思っていない、だって、これ以上痩せたら、夏越し、できなくなってしまいますもの。

 ただ、生活の中で必要とされる或るひとつのものを、断ってみることで、自分の『主調』を知りえることができるような気がするのだ。

 食べないだけなら、簡単なことである。
 私にとって、我慢とは、いえない。
 が、空腹だと、普段は思考回路が落ちる。

 さて、今日は、どのようであるか?

 独りというもの、己の決心だけで生きられると考えると、身軽である。

 せめて、音楽くらいは、部屋にあってほしい。

 流れているのは、『HISTORISCHE ORGELN IN OSTERREICH(Historic organs in Austria)』・・・8年前の夏、オーストリアを旅した時、ウィーンで購入したパイプ・オルガンのCDである。

 蝉の鳴き声と共にある、パイプ・オルガンの音。

 よい、午後である。





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27 July

夏のサナトリウム


 フジロックが始まるね。
 明日からルパンもギターを弾きに、苗場に向かうよ・・・湯川潮音ちゃんと一緒に踏むステージ・・・FIELD OF HEAVEN。
 ところで、この苗場のORANGE COURTは、中央線の電車の色=オレンジから名前がつけられたという説もあるけれど、そういうことなら、なるほど・・・いいね、その命名。

 今日は、夏のサナトリウム的に過ごす。
 どうにもこうにも、躯が動かない・・・頭の方は、しっかりしているのだが。

 昨晩、午後10時過ぎにルパンに連れられて焼き肉屋さんに入った。
 ・・・痩せっぽっちではあるが、肉食の私・・・を実感し、遅い時間にもかかわらず、美味しい思いをしたのはいいのだけれど、今朝は、胸焼けがして大変。
「お肉の脂を落として、少しカリッとした食感がいいの」という私に対して、「もう、このあたりで食べた方が美味いよ」とすすめるルパン。
 ・・・脂が身にしみた・・・のである。

 しかし、今宵は今宵で、地元のお店MARUで、午前0時過ぎまで、呑んでしまう。
 北海道産のホタテ焼き、とっても美味しくいただく。
 店長の三島さんとの諸々のお話も楽しく、夏のサナトリウム状態だった昼間が嘘のように・・・話題は、ビート&ギンズバーグ、書籍のお話、'60〜80年代初頭あたりまでのジャズ&ロック・シーン・・・そして、野外コンサートの歴史・・・etc・・・。
 50代後半の方とのお話は、面白い。
 この世代の方々は、生き方がタフ、そして、太い。
 そこには確かに時間差があるのだが、それは、もっと私が若かった頃に比べると、確実に縮まっているようで、背伸びししなくてもよい今日が、愉しいのである。
 いい調子で話し込んでいて、あげく、三島さんに、その年齢には思えないな・・・ということを言われ、ちょっと驚く・・・つまり・・・氏にとっては、私たちはもっと、年がイッてる人のような内容のお話をしているようにお感じになられるらしい・・・ふむ・・・わからないことも、ない・・・のですがね。

 ・・・あなたは、幾つなの?

 そんなことを尋ねられることには、慣れっこになってしまっている。

 そうよ・・・私は、例えば、ノルマンディーに暮らす妖精。
 ウスバカゲロウのような羽根で、好きなものを見てきた。
 ただ、それだけ。

 羽根さえ動けば、まだまだ、飛べる。

 夏のサナトリウム・・・患者は、夜になると、抜け出して・・・。

 錯乱の太宰の『二十世紀旗手』ならぬ、『二十一世紀騎士』に変装する。

 精神だけで生きるにはエネルギーが必要だが、私の精神は、肉体そのものより、業突く張りらしい。

 それも、いい・・・だって私の精神って、どんな些細な動きでさえ、必要とするのですもの。






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26 July

太陽はひとりぼっち


 この映画を観るのは、3度目・・・か・・・しら?

 愛の不毛を描くミケランジェロ・アントニオーニ監督であるが、ロケーションが物語る不毛は、愛の域を越えている。

 モニカ・ヴィッティ扮するヴィオレッタ・・・彼女がこの映画で身につけるシンプルなワンピース、ツーピースは、非常に好むところである私。

 しかし、この年になって鑑賞して、映画のメッセージを改めて実感する。

 不感症とも言える女主人公は、当時の社会が抱える悩みを表現している。
 どこから見てもステキな女にもかかわらず、彼女の心は、混沌としていて、何にたいしても無機質・・・夢中になれない・・・。
 が、世の中は、人間の精神を無視して、進んでいく・・・。
 彼女、何かを暗示するが、誰にもそれは、伝わらない。
 
 アラン・ドロン扮するピエロとの恋に堕ちようとするヴィオレッタではあるが、無理に情熱的になろうと演技する・・・その、気違いじみた歓喜の笑いが、一層、ミゼレーレに磨きをかける。
 そして、美しい女が、反射的に何かを遮る瞬間というものは、ゾクッとするような冷たさを見せるものである。
 彼女の目は、いつも何処かを彷徨う。
「人は何故、質問ばかりするの? 愛し合うのに互いのことを知る必要はないわ・・・愛し合う必要も、ないのかも」
 そんな刹那をつぶやきながらも、「昨夜は気の合う人たちと一緒で楽しかった」と、嘘をつく。
 それでいて、「何故、僕と会う?」と尋ねるピエロに、「あなたをもっと愛したいから」と応える彼女。

 このどうしようもない矛盾に耐えかねる鑑賞者たちの心の中に、ふと、浮き上がるのが・・・ああ、このような感情というものが、人間にあっても、不思議ではない・・・。
 スピードと核の世が・・・華々しい20世紀後半の栄華が羅列される中、人間の心にぽっかりと・・・郊外のアパートメントのように連立する、孤独。
 見事な孤独を味わう。

 おかしな言い方なのだが、この女に、本当に、20才の時というものが、あったのだろうか?・・・などと、考えてしまうのである。
 それは、私が日本の女だからかもしれない。

 西洋というのは、そうよ・・・太古の昔から、子供を子供らしく描かないわ。

 子供らしくない子供・・・か・・・私がそういう子供だったのかも知れない・・・それは、私を囲んだ環境が手伝ったことかもしれないけれど。

 だから、今でも私、子供みたいな大人なのね・・・。




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23 July

私は何処にいるか


 というわけで、昨日は、つい、翳りの顔・・・を綴ってしまったのであるが・・・。
 これも、まったりとした日曜の昼間が差し向けた、渇きのようなものであろう。
 だけど、私は、ただのお人好しでも、ない。 

 夏休みのシーズンなのである・・・このシーズンをこよなく愛しはするが、自由であるだけに、チャンネルを選ばなければならないのである。
 宿題を愉しくこなすように。

 24時間ほど前、私は鉄腕アトムを思い出していた。
 それは、最終回のシーンである。
 カプセルを抱いて、太陽に突っ込んでいく、アトム・・・。
 アストロ・ボーイは、「よーし!」と言って、無邪気に出かけていく。
 それは遠く、熱い太陽である。
 彼は灼かれる・・・それを知っているか、アトム・・・あなたは、それを、知らないのかもしれない・・・何故って、あなたは、ロボットだから・・・。
 とてもとても、ひたすら人間に近づこうと努力し、人間の心を学習しても、あなたは、ロボット・・・未来から来た少年なのに、あなたは、知らないことがたくさんありすぎて、困惑ばかりした・・・。
 あなたが最期まで知り得なかったことは、『死の恐怖』。
 だから、あなたは、いつもの冒険と変わらない気持ちで、太陽に向かっていったわ。

 カミカゼ・・・この精神が、いつまでこの国に、足跡をつけるのだろう?
 特攻は、男の仕事であったが、もはや、この仕事、日本人の女性の裡にまで、深く深く、浸透しているかもしれない・・・。
 この特攻を、戦後、ロボットとして生まれ変わった少年に演じさせることは、酷ではある。
 が、この物語を突然終わらせなければならないなら、このような筋書きにするしか、方法は無かったかもしれない。
 太平洋戦争とアトムが、リンクしていた。
 アストロ・ボーイは、涙など流さないが、勇敢に旅立つわ・・・。
 
 私はアトムが大好きだった。
 うんと小さい時、シャンプーをする度に、「アトムにしてね」と、父や母に言った。
 浴室で、アトム・ヘアーになった泡まみれの自分の姿を鏡で確認して、満足。
 明日も、シャンプーしよう・・・と、嬉しくなる。
 アトム・シャンプーも、買ってもらった・・・アトムの形の容器である。

 私に、人間的な要素がまるで無かったら、どんなに楽だろう・・・なんて、思ってみることも、ある。
 人間達は、それを気の毒と言うかもしれない・・・が、当の本人にとっては、そんなことはどうでもよいことなのである。
 良心とか、罪悪とか、醜悪とか、悲哀とか・・・或は・・・愛や神・・・と言った、そのようなものに、左右される事の無い存在。
 時が来て、依頼されれば、任務につく・・・エネルギーが無くなれば、充電する。
 この手の中にすっぽり収まる、携帯電話と同じような存在。

 アトムが生まれたという年をもう過ぎてしまっている。
 小型のアトムが、今や、人々の手の中にあるのかもしれないわ・・・。

「仮に、あなたが大失敗したと思う時が来たら、その時は、あたしが成功してあげよう」

 ・・・これはきっと、私の中の、無邪気な鉄腕アトムが、言わせたことなのかもしれない。

 
 今日は、それでも、ほんの少しの陽射しもあり、夏らしく、蝉の鳴き声も聞こえていた。

 夕刻間近、自転車に乗ってぶらりとしながら、ふと、一体、私は何処にいるのだろう・・・などと、戸惑った。

 何処まででも、行ける・・・と、身勝手に想像しながら、結局、独りではたいして遠くまでいくことも出来なかった、子供の頃のことを、懐かしみながら。




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22 July

黙って聞いてはいられない!


「仮に、あなたが大失敗したと思った時が来たら、その時は、あたしが成功してあげよう!」

 日頃、青き少女の戯言を語っているようなわたしであるが、ここ一番、という場面では、断言するのが好きである。

「あなたは、自分の命の使い道をもっと知らなければいけないわ」・・・わたしは、ただひたすら祈り続けて盲目的に生きるような真似は、しない・・・。

「俺にとって、『それ』がどれくらい必要なことなのか、時々、わからなくなるんだね、そういう時も、あるさ。『それ』は、素敵な無駄だと、ずっと信じてきた。だが、実際、どうだろう? そんな素敵な無駄なんていうものが、世の中にあるものだろうか?」
 彼は、横を向き、わたしを見ようとしないで応えた。

 その横顔・・・その横顔をじっと眺めながら、わたしは或る物を想像していた・・・これは、ギリシャの彫刻のような形の横顔だ・・・平坦ではなく、優しいというより、厳しい横顔だ・・・。

 そうしてわたしは彼の話を聞くために、このようなことを思っていた・・・

 ・・・いいかい? ここから先もあるんだったら、絶対に肩を落とさず、言うんだぜ!・・・男なら・・・
 ・・・と、わたしは、口を真一文字にして、彼を睨みつけるように心の中で呟いた。


 では、今度は、少しわたしが語ろう・・・もの静かに・・・

 ・・・わたしは、あなたに、喜びを与えようとしてきた・・・幸せも・・・。或る時には、あなたの楯になり、平和というものが、『此処に』あり続けるために、色々な工夫をしながら生きてきた。
 ・・・昔、あなたと深く知り合った頃、私は決心した・・・この人を決して悲しませるようなことは、しまい・・・と。それでも、わたしはしばし、あなたを苦しめることもしただろう・・・そう、わたしは、優しいが、それほど生易しい女でも、ないからだ。
 ・・・あなたは、費えばいい・・・わたしは、抱くから・・・そのように、自分に言い聞かせてきた。

 わたしはね、人生を愛していると、言わずには、いられない。
 わたしはあなたの話を聞くのが、好きよ。
 でも、こういう話は、いけない・・・頼むから、わたしを怒らせないで・・・。

 わたしは、わたしの過去を否定するような未来をのぞまない。
 わたしとは、そういう女であるということを、最もよく知っているのは、あなたではなかっただろうか?

 しかし、今までのわたしは、このような生き方をしていたかもしれない・・・

 ・・・唯一の栄誉は役に立たないことだ。私を好きなものにしてごらんなさい、映写幕だろうと、良導体の金属だろうと・・・

                            ユルスナール


 わたしは人を一個の物にするような吝嗇ではないが、自分が一個の物のように扱われることには、寛容だった。

 さて、それで、いいのだろうか?
 わたしは、彼の素敵な無駄・・・になるわけには、いかないのである。

 だから・・・

 わたしは昨夜、彼に対して、黙ってはいられなかった。
 
  ・・・あなたは、『それ』を止めるようなことがあったら、何に対しても、身が入らないだろう。
 そんなことを、わたしはさせるわけには、いかないのだ。

 彼は、先に眠った。
 わたしはもう少し、目覚めていた。
 窓を開けた・・・夜風は、湿っている・・・この湿気、こりごりではある・・・が、随分と気をもんだ後のためか、馬鹿馬鹿しいくらい、東洋の夏の夜が愛おしく感じられた。
 ・・・不思議なものである。

「仮に、あなたが大失敗したと思った時が来たら、その時は、あたしが成功してあげよう」

 わたしはもう一度、今度は至って小さな声で、囁いた。

 ・・・その時がやってきたなら・・・あなたは、歌でも歌っていなさい・・・気侭に生きなさい・・・わたしは、何処へでもあなたを連れていくし、何でも、与えてあげよう・・・。


 凄いナルシストだな!

 わたしはベッドにもぐり込んだ。

 ・・・盲しいているさ・・・見誤っても、いるかもしれない・・・だが、道は、譲るものであるが、留まっているだけでは厭な性分なのよ・・・わたしは・・・。

 夢もみない暗い深い眠りにありつけたのは、久しぶりのことである。


 昼過ぎ、彼は仕事に出かけて行った。
「おや? 今日は珍しく、ふたり、お揃いのTシャツを着ているじゃないか?」
 と、玄関のドアを開けながら、そんな可愛らしい言葉を発する彼である。
「あら、ほんと・・・でも、このTシャツに先に着替えたのは、あたしよ」

 人間て、だんだんと成長するものね・・・たった一晩という時間の流れの中にあっても。
 ・・・あの人は、昨日、疲れていただけのことでしょう・・・。

 わたし?
 そういうことなら、もうしばらく、このナルシストぶり・・・延長していたい。

 それで、意志の力とやらが、ティーンの頃のように、自由に大手を振って、発揮される日々がつづくのなら・・・。





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