Archive for 18 March 2009

18 March

W・モリスと我が街に"YES"



 夕刻、ちょっと人と会うために我が街の酒場に遊ぶ。
 カウンターには、私の著書『YES』が立てかけてあり、3月13日の発売日からこの店でも販売してくださっているのだが、もう、一冊売れたとのこと。嬉しい。

 西の東京の我が街は、実は興味深い方々が暮らしている。故武満徹氏も同じ街に居を構えていらしたが、緑も多く、何しろ美味しいおうどん屋さんがたくさんある(「武蔵野うどん」と言われていて、本当に美味しいのよ!)。
 
 ところで、また私の著書の表紙のお話になるが、このデザインは、19世紀英国のデザイナーであり、詩人でもあったウィリアム・モリスのイメージを思わせるものに仕上げていただいたのだが、今夕、酒場にて、このモリスのお話になって知ったのは、この街にモリスを大変敬愛される女性の版画家の方が暮らしていらっしゃるということ。S・Yさんという方なのだが、還暦ももう過ぎたお年であるそうだが、とても凛とした方らしい。是非、訪れてみたい。そして、お話させていただきたいと思った。


 少しウィリアム・モリスのことを・・・彼は、モダン・デザインの父とも呼ばれる人。そして、ダンテ・ガブリエル・ロセッティやジョン・エヴァレット・ミレイをはじめとするラファエル前派に親しむのであるが、このモリスの妻となった女性はロセッティらの絵のモデルの一人であったジェーン・バーデンである。
 モリスの時代、英国は産業革命後、大量生産の時代として栄えた。栄えたはいいが、それは、そう、大量生産なのである。多くを作り、消費し、散っていく。
 それを嘆く職人気質のアーティストたちは、その姿勢を翻すための運動を行った。
 これが、「アーツ・アンド・クラフツ運動」と呼ばれるムーヴメントだが、この思想(姿勢)は、生活とアートを共存させる思考を基に築かれた。日々の暮らしの中に、<美>を・・・という在り方である。
 このような暮らしをするには、大量生産、大量消費に背を向けざるをえない・・・つまり、やや贅沢ともいえるわけで、安上がりを望む合理的な暮らしとは異なった世界になるやもしれない。よって、批判もあったことだろう・・・。
 しかし、彼らの姿勢の根底にあったのは、安く手に入る質の落ちる製品ではなく、職人魂、或いは、アーティスト精神に乗っとったより良き作品を世の中に届けるという理想なのである。
 が、この運動は、20世紀にも受け継がれ、この日本でも、柳宗悦の「民芸運動」などにもうかがえる姿勢である。

 それでも、モリスの壁紙は、今日ではこの国でも人気であり、あちこちでモリス・デザインのマグ・カップやらハンカチーフやらを見ることができ、もはやポピュラーと言っても言い過ぎではないだろう。

 19世紀、このアーツ・アンド・クラフツ運動の拠点となった場所は、ロンドン郊外にあった。
 その建物は、「レッド・ハウス(文字通り、赤い家)」と称され、モリスをはじめロセッティなどラファエル前派のアーティストが集った家だった。そもそも、モリスとジェーンの新婚生活の家として建てられのだが、「レッド・ハウス」は、自然と伝統を唱えるアーティストの場所として美しく今日でも残されていることは有名である。
 この「レッド・ハウス」、今日、ナショナルトラストの所有となっている。


 そういう私の家は、「青い家」である。「レッド・ハウス」に及びはしないが、外壁は青く、居間のブルーの壁紙は花模様である。特に高価なものを設えてはいないが、それでもここに暮らす住人の生き様に見合った程度の自然な在り方を望んでいる・・・だが、音楽を遣る者同士が暮らしているので、楽器が占める面積がどうしても多い・・・廊下にギター・ケースが置かれていることもあれば、我が愛するピアノの上は、ダダとも言えるほど様々なものが置かれていたり・・・譜面、マンドリン(これは困る、ピアノを弾くと弦同士が共鳴するのですもの!)、フェルメールの『ミルクを注ぐ女』の小さな絵、祖父母の家にあった硝子の古い花瓶、アーム(エレキ・ギターの)、沖縄で買った缶で作られた三線・・・そして、私のこのピアノは、これを弾く私が椅子に座れば、南東の窓を向くように設置されているのだが、窓の左側の白い壁にはロンドン南西部のキュー・ガーデン(Royal Botanic Gardens, Kew)をかつて訪れた時に購入した、このキュー植物園の描かれたリネンの布が貼ってある。・・・(しかし、この庭園に観た、ウィリアム・チェンバーズ設計の「中国のパゴダ」は、おかしな印象があったものだが)・・・。


 英国贔屓な今宵になっただろうか?
 
 この夕刻、そろそろ家に帰り、お夕食の仕度を・・・と思っていた頃、昨年暮にこの店で会ったドイツ人、Benが入って来た。
 彼と私の著書のことを、しばし話す。・・・私の著書の「あとがき」の部分には、私が綴った短い英詩が載せてあるのだが、カウンターに置かれているこの本を取り上げ、その英詩を読んだBenは、「nice」と言いながらも、こう私に訪ねた(彼は長年日本に暮らしていても日本語はほとんど解釈できないのである)・・・
「あなたはもしも誰かがこの本を批判する声を聴いたら、どう思うか?」
 私は応えた。
「私は"YES"と応える。何故ならそれは、"FREE"だから」

 "NO"を言う事は、私にとっては、容易いことである。

 しかし、どんなことを言われても、自分の作ったものに"YES"と応えるのは、その仕事をした本人の責務である。


 日本人の私は、天井に、"YES"。



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