歪な真珠

　歪な真珠・・・やはり、バロック・・・。
　何が私をそう駆り立てるのか解らないまま、進む一日。
　時々、孤独な群集について、思う。
　キッチンに立つ時や、ベランダで衣類を干している時など。

　それ以外は、裸足に鞣した皮のサンダルを履いている心地でゾクゾクしながら走る。
　リヴィングを、走る。
　椅子ごと、走る。
　窓の向こうを、走る。
　私の心は、走っている。
　今は、集うのではなく、ひとり、走る。
　だが、向かうだろう。
　ひとりではない場所へ。
　
　だから今は、このゴテゴテの歪な真珠の世界にいなければならない。

　・・・私は自分のつつましい労働者の手の中で、ペン軸を七回まわす・・・

　と、言ったのは、エリック・サティであったが・・・

　私は七回では済まされないだろう。

　彼の素晴らしい機知に投げるキス、七回。

　God...
　明日はもっと遡ろうか？
　ルネサンス・・・再生・・・ああ、モンテヴェルディよりも、前に。

　しかし、今、私にとって、"Lento"はタブー。


　天井に、"YES"。