Archive for 25 January 2009

25 January

「SUFFRAGETTE CITY」からの手紙



 oh shit! まだ、終わらない!
 左足は今、ハイハットを小刻みに踏むより速く動いている。これ、貧乏揺すりではありません。
 oh bitch! もうすぐ、〆ようじゃないか!
 今日は誘われたライヴを三つとも蹴って作業している。ひとつはチェリーの国立、ひとつは池尻のM氏、もうひとつはクアトロ。
 
 夕食も終わらせ(パスタ)、瓶缶も集積所に出す。
 とりあえず一休み、ではあるが、地味に休まない、今、私は「SUFFRAGETTE CITY」にいる。
 ここは、グラムな街、『ZIGGY STARDUST』が終了するまでの時間をここで過ごし、再び、Risaの部屋に戻るのである、〆めるためにね。

 さあ、「FIVE YEARS」からスタートしよう。
 ジギー・スターダストを頻繁に聴いていたのは15の時だった。ボウイーだよ、アンドロギュノスのように髪を染めて靡かせながら、女性的にロック・シーンに登場した彼は、みるみるうちに、宇宙から遣って来た男となって、20世紀後半の世の中に終末思想のよう詩を叫んだ。ディランに憧れていた彼は、いつしかギラギラしたヴェルヴェッドの使者となっていた。「SOUL LOVE」を歌う彼はカリスマの愛の聖人となりながら私の中に入って来た。へたくそなサックスの音、彼はビート世代の洗礼を受け、喧嘩で片目を潰し、大理石の瞳で私を魅了した。「STARMAN」を気取る彼は空を飛びながら私をクルクル舞いさせた。私はハンバーガー片手に、土曜の午後を彼と過ごした。ロックンロールって、何て鮮やかなんだろう! 時はチープトリックが来日する頃、私はディヴィッドにときめいていた。いや、ロビン・ザンダーも好きだったが、ディヴィッドには敵わない。ジョン・レノンが少し遠のくような気がしそうになったが、レノンと彼は仲良しらしい。OK、それならいいじゃない。「このオカマ野郎!」なんて、彼の悪口を言ったのは、フランク・シナトラだけなら、よろしい。
 ちょいとした不良でもあった私は音楽大学受験を目指していたが、こんなロック娘だと上品な音大には、蹴り飛ばされるかもしれないと考えてもいた。だから、もうひとつの手段を念頭に入れておいた。それは、どこかの史学科あたりにもぐり込んで、煙草の煙りと瞑想で過ごす大学生活だった。歴史と英語は、密かに自分試しのつもりでせっせと勉強したりもしていた。
 で、何しろ大事なのは、私がいつか、レノンとボウイーを合体させたような男と出会うことだった。そのためにも、英語が出来なければいけない、何といっても、相手は外国人とキマっているのだから。 
 そんな調子だったがゆえ、15の私はロックを日本でいうクラシックと平行させながら聴いていた。例えば、'60年代に産声をあげたビートルズをバッハに無理矢理当てはめてみる。ロックンロールはビートルズ以前から育っていたのだから、このビートルズが世界を駆け巡り、サージェントを作った頃を後期バロック、つまり、大バッハの仕事と考えると、’60年代後期から'70年代初頭は、さしずめロックの黄金期と言ってもいいじゃない・・・バロック、それは絢爛にして歪・・・ゴテゴテの時代・・・サイケ、フラワーまさに、艶やかなファションと歪んだ音・・・しかも、そこには淀んだ空気と不謹慎、清潔感というより、混沌の流れがある。「HUNG ON TO YOURSELF」を聴きながら、私は自分のブルージーンの色を抜き、落書きをした。時にはラメ入りのマニュキアを歯に入れたりしながら、鏡を見る。手の爪には、マニュキアを塗らない、その塗らない指先でバッハやベートーヴェンを弾く。弾くが、私のピアノはトッ散らかっていただろう、しかし、音楽は止められなかった。
 そこで考えたのが、合理的ということだった。不良であることは、どうも止められない。しかし、上品な皮をかぶり、進学するのである。ひとりの人間として居ようと思うと難しいので、何人かの人間に事情ごとに成りすますという手段を思いつく。
 いい具合に、その頃書店で購入したボウイーの本に彼の言葉がたくさん書かれているではないか。彼は言う、「僕はつねに変貌する」と。あはっ! これよ、これ! 私も今すぐ、彼のようになればいい。
 その結果、私は見事に上品に成りすまし、音楽大学に入り込んでしまった。
 さて、私は今、「SUFFRAGETTE CITY」にいる。
 もうすぐ、「ROCK'N ROLL SUICIDE」、アルバム『ZIGGY STARDUST』の最後の曲となる。
 この記事を同時に書き終えることが出来るか、私?
 打つ指は速いが、どうか? 
 さて、私はレノンとボウイーを混ぜ合わせたような男性に人生において巡り会えたと言えるか?
 その応えは、一応、「会えた」と応えておこう。
 彼は蒼い目、そして、ディヴィッドに良く似た歌声で歌う、そして、つねに変貌する。
 彼はレノンのような言葉を語り、落書きをする。
 私はあの頃の気持ちで作業をしている。
 そんなところである。
 
 

 さてさて、仕事に戻ろう。
 ああ、ここまで来た。
 吐き気がするくらい眠れないここ数日だが、バロックだからな、歪だからな、痩せ我慢してやろうじゃないか、今くらい。

 〆・・・ようゼ!

 食後にうっかり寝たりしてしまわないように書いた炸文である。 
 星屑のような文面。

「SUFFRAGETTE CITY」より愛をこめて


 消すかも知れないな、この炸文。

 では、別NOTEへ、GO!

 「FIVE YEARS」ならぬ、「FIVE HOURS」。

 深夜には、チェリーを迎えに、駅まで車を走らせ、頭を冷やすことができるだろう。



 LOVE





21:47:36 | mom | 1 comment | TrackBacks