Archive for 02 April 2009

02 April

4月は残酷な月



 Marianne#


 4月は残酷な月
 死んだ土地からライラックを育て
 記憶と欲望を混ぜ
 鈍重な根を春の雨で刺激する・・・

 
 私は1986年からずっと、4月になると、この言葉を口ずさんできた。
 これはT・S・エリオットの詩、『荒地』の中の「死者を葬る」の冒頭。


 ライラックは、リラの花とも呼ばれているが、「リラ」というと、私は子供の頃からチャイコフスキーの『眠れる森の美女』の中で踊るリラの妖精のことを思う。
 リラの精は、たいてい、ブルーか薄紫色の衣装でステージに登場する。他の花の精たちの筆頭として愛し合うふたりを祝福する役目。バレエ・ダンサーとしてリラの精の役をいただくことは、ベテランの証しともいえるかもしれない。踊りには熟練の安定が見られ、主役を引立てるように舞台に立つ。
 

 そのリラ=ライラックの花が、春とはいえど、まだ寒い大地に芽吹き、花を咲かせていくことを冒頭から残酷と言い放ち、その春を記憶と欲望の季節と言い切り、地面の下にあるがゆえ、目に見えないがゆえ、鈍重という言い方で根を評価した風を装い、春の雨を刺激物と扱うなんて、何てひねくれ者!

 と、若い私は感嘆したものだった。
 以来、4月になると、必ずこの言葉を声にしたくなる。
 この4月を残酷と感じる事で、次の季節を夢想したくもなり、この春を、passion=情熱、とも、受難とも、置き換えることができるの・・・。


 一昨日から深夜になると、硝子の破片がたくさん目に刺さっているように痛む。
 例えば、半年という時間をかけて徐々に変化してしまったものを元に戻すには、どれくらいの時間がかかるかしら?
 倍とも3倍とも言えるかもしれないけれど、私は同じだけの時間でそれを修復しようと試みる。


 そう、4月はダイアモンドの月。
 だから今、私の目に刺さっているのは、ただの硝子の破片ではなく、ダイアモンドだと思おう。
 ダイアモンド、この宝石の持つ言葉は、「無敵」。
 それを信じて、私は残酷に身をゆだね、開放から展開にステップしよう。
 いいえ、ステップでは、鈍重な私には、甘いかもしれないわ。
 
 Drive・・・

 瞳はダイアモンド、私はさあ、エンジンを吹かして、痛みを撥ね除け、彼の(かの)世界へ。
 今宵は羽根は、無し。
 リラの精が、奪っていった。
 私は夢に現れる老女に跪くが、国境を越える。


   *


 明日4月2日、シカラムータのライヴ@吉祥寺スターパインズカフェに足を運ばせていただきます。
 久しぶりのシカラムータ、楽しみ!

 有り難いことに、会場の片隅にて、著書『YES』の販売もさせていただくこととなりました。



 そして今、部屋に流れているのは、リオン・ラッセル、「blue bird」。

 これこそ、春を感じるもの、残酷な4月に夢を見させる曲!


 
 ..* Risa *¨






02:42:58 | mom | No comments | TrackBacks