Complete text -- "ハレルヤ"

30 April

ハレルヤ



 爽やかな空模様。だけど、ここのところ、何か肌寒い陽気。肌寒いというのは、始末が悪い・・・寒いなら寒い、そうであれば納得して着込むけれど、肌寒いというのは、肌が寒く感じるということで、では、世界は寒いのか、と言えば、そういうわけでもないような・・・つまり、曖昧さの条件が精神ではなく、肉体に向けられていることが煩わしいということ。
 ・・・ん・・・何だか、私こそ、わけの解らんこと言ってるかしら?


 そんな午前中、レナード・コーエンの「ハレルヤ」を聴いていた。

 
 


 この人は1934年のカナダ生まれ。そもそも詩人として'50年代を生き、『神話を生きる/Let Us Compare Mythologies』という処女作を発表した後、'60年代に小説『嘆きの壁/Beautiful Losers』を出版するが、'60年代後期からシンガーソングライターとして活動を始める。レナード・コーエンは、そういう意味で、ビート世代の作家であり(若い頃はドラッグ下にあった時期もあったか・・・)、その後、溺れることなく21世紀を生きる。今年で75歳になるコーエンは、私の父とほぼ同世代。上の映像は惹かれる・・・まるで俳優のようでもある。
 レナード・コーエンからは少し話しが逸れるが、カナダのアーティストというのは、独特の雰囲気がある。エレガントとアンニュイが混ざり合い、そこに仏国的な小粋さが一役かい、そこにケルティックorドルイド的な呪術的な伝統の匂いまでする人がいる。
 コーエンは禅思想に傾倒し、その後、臨済宗の和尚となったと先程wikiで調べたら記述してあったが、驚きである、ビートであった人が、まさに禅の世界に入り込んだ稀なケースのひとつかもしれない。
 ここで彼の曲「Hey, That's No Way To Goodbye」と、「Famous Blue Raincoat」についての彼自身の"覚え書き"を・・・


「この曲は使い古されたペン・ターミナルホテルのベッドの中で1966年に生まれる。窓を開けられない。部屋は熱過ぎる。私はブロンドの婦人と鋭い口論の最中である。曲を半分鉛筆で書く。ひたすらお互いにやり合う。私は間違った部屋に居る。私は間違った女といる」

「当時、私は上等なレインコートを持っていた。バーバリー製で1959年にロンドンで買った。エリザベスは、それを着ると私がクモのようだと感じた。だからおそらく彼女は私と一緒に、ギリシャに来なかったのだろう。ライニングを取ったら、もっと格好がよくなった。小さな皮ですり切れた袖を直したら、美しくなった。話しは簡単である。その頃の私は着こなし方を知っていた。70年代のはじめの頃、NYのマリアンヌの屋根裏部屋で盗まれた。終わりの頃は、あまり着なかった」

 ・・・「Famous Blue Raincoat」の調べは暗い。この暗さは、人間だったら、誰もが通り過ぎたことのある暗さを、リリックに表現している。ふつう、人は、一々自分の暗さを表現として浮き彫りにしないこともあるだろう・・・これはただ、暗い心をありのままに文字に書くことではない、その気分を理解してくれそうな誰かにあからさまに漏らすことでもないわ・・・あくまで、表現として噛み下し、美しい言葉や声として表すことを言っているのよ・・・。そしてそこには一種の高貴に似た光があって、その内訳は、実は日常の単なるもやもやであったり、諍いであったり、要するに、肌寒い人生の一時期であったりすることを、繊細に描く表現者の冷めた(醒めた)目が必要なの。

 若い頃のコーエンの声と比べると昨年の声はよい具合に枯れ、ダンディである。
 その歌は、人々を大きく包み込む・・・いいえ、包み込むなんていう言葉より、抱く、がいい。
 優しく包み込む、とか、抱く、という言い方に、私は別れを告げたくなる。
 だって、優しさも、嘆きも、怒りも、それら全ては、大きなものの中の部分よ・・・。

 私の著書『YES』は、今思えば、優し過ぎたかもしれないな。

 優しい・・・それは、とても嬉しい言葉だし、ありがたい言葉だし、豊かな言葉だけれど、"大きい"輪の中のひとつの状態なのかもしれなくてね。

 でも、まだまだ、"大きい"になるには、時間がかかりそう。
 
 肌寒い29日、晴れていても、バーバリーのコートなどに包まりたくなるような小さな妖精は、この黄金週を作業の日々にする必要がありそう。
 休日は、そう名付ければ、いつでも遣ってくる。
 が、作業の日は、夜も昼もなく、あたかも、「出物腫れ物ところ構わず」的に遣ってくる。
 が、ここは、熱過ぎはせず、私は間違った部屋にはいない。
 では、そこから何を作るか?
 野望はなし。
 インフルを作るような真似もしない・・・誰が、何のために、この麗しい世界を混乱させる必要があるかしら?!
 少なくとも、人を臆病にするようなものは、作らない。

 もっと老いることが私に可能ならば、"vagabond"に、"hobo"に・・・。


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 『YES』桜井李早:著/MARU書房

 著書『YES』の通販のお知らせです。
 お値段は1500円+送料手数料200円です。
 御注文は、お名前、発送先、部数をお書き添えのうえこちらまで。

 御注文くださった方のプライバシーは、当然、厳守させていただきます。

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 そして、著書『YES』出版記念パーティー&ライヴのお知らせです。
 5月23日(土曜日)
 出演ミュージシャンは、青山陽一、sakana、桜井李早+桜井芳樹...(飛び入りゲストさんがあるかもしれません!)
 open / 18:00
 start / 19:00
 前売 / \2000 (ご予約は月曜日を除き、18:00以降、直接、お店の方に電話でお問い合わせください)
 当日 / \2500
 場所 / MARU(東村山市野口町1-11-3 tel 042-395-4430)


 hope you have a wonderful Golden week!


 PEACE & LOVE


 ..* Risa *¨






03:34:47 | mom | | TrackBacks
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